数学の基本的な代数的構造の一つに「群」があります。「群」とは、特定のルールに従った要素の集まりで、これを理解することで、数学のさまざまな面が明らかになります。
今回は、群の定義と具体例について学習しましょう!
今回は群について学習しよう!
この記事で学べる事
- 群の定義
- 単位元の定義と一意性
- 逆元の定義と一意性
- 群の具体例
群の定義
群は、ある集合とその集合上の演算の組み合わせで定義されます。群は次の3つのルールを満たすものになります。
結合法則:任意の要素に対し、演算の順序は結果に影響しない。
単位元の存在:集合には、演算に影響しない特別な要素が存在する。
逆元の存在:各要素には、演算を行うと単位元となる逆の要素が存在する。
これらの概念をより身近に感じるために、1つ例を挙げます。たとえば、整数の集合とその上の和(足し算)は群をとなります。足し算は演算の順序は結果に影響しません。また、単位元は「0」、各元の逆元はその負の数です。3つのルールを満たすため、整数の集合と足し算は群の一例となります。
実際の正確な群の定義をみてみましょう。
群の定義
集合 G とその上の二項演算 ・: G × G → G の組 (G, ・) が以下の3つの条件を満たすとき、組 (G, ・) を群(group)という。
1.(結合法則)任意の g, h, k ∈G に対して、 ( g・h )・k = g・( h・k ) が成り立つ。
2.(単位元の存在)任意の g ∈G に対して、g・e = e・g = g を 満たすような e ∈G が存在する。
3.(逆元の存在)任意の g ∈G に対して、g・h = h・g = e を 満たすような h ∈G が存在する。
この定義を一つずつ確認してみましょう。
まず、集合 G を用意します。
二項演算・: G × G → G から、任意の g, h ∈G に対して、g・h ∈G となっている必要があります。
つまり集合 G は演算・について閉じている必要があります。
1.の結合法則からどの順番で二項演算を行っても変わらないことがわかります。
2.の単位元の存在から、任意のGの元に対して、二項演算を行っても結果が変わらないGの元が存在することがわかります。
3.の逆元の存在から、任意のGの元に対して、二項演算を行うと単位元になるGの元が存在することがわかります。
単位元
群の定義2.「(単位元の存在)任意の g ∈G に対して、g・e = e・g = g を 満たすような e ∈G が存在する。」を満たすeを単位元といいます。
単位元をわかりやすく言うと、掛けても答えが変わらない元のことです。
例えば整数で考えたときの1が単位元になります。
また、単位元が存在すれば一意になります。
単位元が存在すれば一意である
単位元が存在すれば一意の証明
証明:組 (G, ・) を群、e, e’∈G を単位元とする。
このとき、e = e・e’ = e’ となる。(群の定義2.より)
よって、e = e’ なので単位元が存在すれば一意になる。
逆元
群の定義3.「(逆元の存在)任意の g ∈G に対して、g・h = h・g = e を 満たすような h ∈G が存在する。」を満たす h を g の逆元といい g-1 と書きます。
逆元をわかりやすく言うと、掛けて単位元になる元のことです。
例えば実数で考えたときの逆数が逆元になります。
また、逆元が存在すれば一意になります。
逆元が存在すれば一意である
逆元が存在すれば一意の証明
証明:組 (G, ・) を群、g ∈G 、g-1 ,g‘-1∈G を g の逆元、e ∈G を単位元とする。
このとき、g-1 = e・g-1 = ( g‘-1・g )・g-1 = g‘-1・(g ・g-1 ) = g‘-1・e = g‘-1
よって、g-1 = g‘-1 なので逆元が存在すれば一意になる。
群の具体例
自明群
G = {e} , ・: G × G → G を (e, e) → e で定義すると(G, ・)は群になる、この群を自明群(trivial group)または単位群という。
自明群の単位元、逆元はすべて e になります。
整数全体の集合
整数全体の集合 \(\mathbb{Z}\)と和(足し算)の組 (\(\mathbb{Z}\),+) は群である。
単位元は0、a の逆元は -a になります。
実数全体の集合
実数全体の集合 \(\mathbb{R}\)と和(足し算)の組 (\(\mathbb{R}\),+) は群である。
単位元は0、a の逆元は -a になります。
実数全体から0を除いた集合
実数全体から0を除いた集合 \(\mathbb{R}\setminus 0\)と積(かけ算)の組 (\(\mathbb{R}\setminus 0\),・) は群である。
単位元は1、a の逆元は\(\frac{1}{a}\)になります。
n次正則行列の集合
実数を成分に持つn次正則行列全体の集合 \(GL_{n}(\mathbb{R})\)と行列の乗法の組 (\(GL_{n}(\mathbb{R})\),・) は群である。
単位元は単位行列、逆元は逆行列になります。
群のまとめ
数学の基本的な代数的構造の一つに群があります。
今回は、群の定義と具体例について学習しました!
集合 G とその上の二項演算 ・: G × G → G の組 (G, ・) が以下の3つの条件を満たすとき、組 (G, ・) を群(group)という。
1.(結合法則)任意の g, h, k ∈G に対して、 ( g・h )・k = g・( h・k ) が成り立つ。
2.(単位元の存在)任意の g ∈G に対して、g・e = e・g = g を 満たすような e ∈G が存在する。
3.(逆元の存在)任意の g ∈G に対して、g・h = h・g = e を 満たすような h ∈G が存在する。
今回は群について学習したよ!